現代の肥満の原因は、砂糖と果糖ブドウ糖液糖が重要な要因であると結論づけている研究論文が複数あります。
Nature. 2012 Feb 1;482(7383):27-9. doi: 10.1038/482027a.
Am J Clin Nutr. 2004 Apr;79(4):537-43. doi: 10.1093/ajcn/79.4.537.
この記事では、果糖ブドウ糖液糖や砂糖を摂取するで、起こり得る健康の弊害を、研究データを元にご紹介します。
加工食品の闇を暴いていくよ
…とその前に、予備知識として、果糖ぶどう糖液糖と砂糖、またその構成成分について簡単に説明をします。
「そんなの知ってるから結論はよ」という方は、目次より「1.非アルコール性脂肪性肝疾患のリスク」まで飛んでください。
果糖ブドウ糖液糖とは
果糖ブドウ糖液糖は、トウモロコシやイモから作られた「異性化糖」の一種です。
異性化糖は果糖の含有量によって、下記のように名称が定められています。
・果糖含有率50%未満→「ブドウ糖果糖液糖」
・果糖含有率50%以上90%未満→「果糖ブドウ糖液糖」
・果糖含有率90%以上→「高果糖液糖」
ずっと見てたら「糖」がゲシュタルト崩壊してきたわ
ちなみに海外では異性化糖は「高フルクトース・コーンシロップ」と呼ばれています!
果糖ブドウ糖液糖など異性化糖は、清涼飲料水やお菓子、調味料やヨーグルトやレトルト食品など、それはもう様々な食品に添加されています。
加工食品に異性化糖を使う理由として、高濃度でも結晶化しにくく粘りも少ない、大量での運送や保存が可能、安価である、これらが上げられます。
また、砂糖やブドウ糖の甘味は温度によってさほど変化しないのに対し、果糖は冷やした方が甘みを強く感じるという性質があります。
このことから清涼飲料水には果糖を多く含んだ「果糖ブドウ糖液糖」がよく使われるのです。
【参考 JAS(日本農林規格)】
砂糖とは
砂糖とは植物から取り出されたショ糖(スクロース)を主成分とする甘味物質です。
上砂糖・黒砂糖・グラニュー糖・三温糖・てんさい糖(甜菜糖)…砂糖にはさまざまな種類がありますが、すべて同じショ糖が主成分です。
「わたしはてんさい糖を使っているから健康なのよ!」という方もおられるかもしれません。
確かにてんさい糖は糖蜜ですので、ほかの砂糖よりもミネラルが豊富でGI値も低いですが、結局は構造は同じ糖質であり、カロリーのある「砂糖」ですので摂り過ぎは厳禁です。
【参考】
- 文部科学省「食品成分データベース」食品群名/食品名: (砂糖類) てんさい含蜜糖https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=3_03030_7
- 文部科学省「食品成分データベース」食品群名/食品名: 砂糖及び甘味類/(砂糖類)/黒砂糖
- 文部科学省「食品成分データベース」食品群名/食品名: 砂糖及び甘味類/(砂糖類)/車糖/上白糖
- 文部科学省「食品成分データベース」食品群名/食品名: 砂糖及び甘味類/(砂糖類)/ざらめ糖/グラニュー糖
- 文部科学省「食品成分データベース」食品群名/食品名: 砂糖及び甘味類/(砂糖類)/車糖/三温糖
- 一般財団法人 食品分析開発センター
不自然な量のフルクトースを摂取することになった人類
砂糖や果糖ブドウ糖液糖は、グルコースとフルクトースが約50%ずつで構成されています。
フルクトースはグルコースと異なった独特の代謝特性を有しており、主に肝臓に取り込まれて、そこでブドウ糖、グリコーゲン(貯蔵炭水化物)、または脂肪に変換する過程が必要となります。
J Nutr. 2009 Jun; 139(6): 1257S–1262S.
フルクトースは単糖として果物や野菜に含まれている成分です。
適量な自然な食事から得られるフルクトース量ですと健康上に問題はないとされています。
しかしながら、安くて使い勝手のよい果糖ブドウ糖液糖の出現により、企業は清涼飲料水や調味料に当たり前のように添加するようになります。そして美味しく感じる果糖ブドウ糖液糖入りの加工食品を私たちは買い求めるようになり、当たり前のように食卓にも並びます。
また砂糖たっぷりで甘くて美味しい、また画像映えもするスイーツが身近に手に入るようにもなりました。
その結果、ここ数十年のうちに私たちのフルクトース摂取量は著しく増加しました。
以下に挙げる果糖ブドウ糖液糖と砂糖の過剰摂取の悪影響は、その構成成分のうち「フルクトース」の過剰摂取によって引き起こされるものであることを、まずは説明しておきます。
Praxis (Bern 1994). 2016 Jun 22;105(13):749-53. doi: 10.1024/1661-8157/a002399.
1.非アルコール性脂肪性肝疾患のリスク
先にも説明したように、フルクトースは肝臓に取り込まれて代謝されるため、大量に摂取すると肝臓内の脂肪が増加します。
体重過多の男女を対象にしたある研究では、ショ糖入りソーダを6カ月間飲むと、牛乳やダイエットソーダ、水を飲んだ場合と比較して、肝臓の脂肪が有意に増加することが示されました。
Am J Clin Nutr. 2012 Feb;95(2):283-9. doi: 10.3945/ajcn.111.022533. Epub 2011 Dec 28.
他の研究でも、フルクトースは、同量のグルコースよりも大きく肝脂肪を増加させることが分かっています。
J Clin Invest. 2009 May;119(5):1322-34. doi: 10.1172/JCI37385. Epub 2009 Apr 20.
長期的に見ますと、肝脂肪の蓄積は、脂肪性肝疾患や2型糖尿病といった深刻な健康問題につながる可能性があります。
Diabetes. 2005 Jul;54(7):1907-13. doi: 10.2337/diabetes.54.7.1907.
Curr Opin Lipidol. 2013 Jun;24(3):198-206. doi: 10.1097/MOL.0b013e3283613bca.
ここで重要なのは、果糖ブドウ糖液糖に含まれる果糖の有害性を、果物に含まれる果糖と同様に考えてはいけないということです。
果物の果糖を過剰に摂取することはそもそも難しく(過剰摂取になる前に満腹になる)、常識的な量であれば、むしろ食物繊維やミネラルも摂取できますので、健康的であるといえます。
(アレルギーや医者により果物摂取の制限がある場合を除く。)
まとめ
果糖ブドウ糖液糖は、肝脂肪を増加させる原因となる可能性があります。
これは、他の炭水化物とは代謝が異なるフルクトースを多く含んでいるためです。
2. 肥満や体重増加のリスクを高める
長期的な研究によると、果糖ブドウ糖液糖と砂糖の過剰摂取は、肥満の発生の重要ファクターであるとのこと。
Lancet. 2001 Feb 17;357(9255):505-8. doi: 10.1016/S0140-6736(00)04041-1.
Dietary sugars and body weight: systematic review and meta-analyses of randomized controlled trials and cohort studies
L Te Morenga, S Mallard, and J Mann.A review published: 2013.
ある研究では、健康な成人にグルコースとフルクトースの、どちらかを含む飲料を飲んでもらいました。
2つのグループを比較すると、フルクトース飲料は、グルコース飲料と同じレベルで食欲を制御する脳の領域を刺激しませんでした。
つまり、フルクトース摂取はグルコース摂取時より満腹度が低いということです。
満腹感が得られなければ、より過剰に摂取してしまう恐れがあります。
JAMA. 2013 Jan 2;309(1):63-70. doi: 10.1001/jama.2012.116975.
またフルクトースは内臓脂肪の蓄積を促進します。
内臓脂肪は臓器を取り囲んでおり内臓保護の役割を果たしていますが、その量が内臓脂肪が過剰になると糖尿病や心臓病などの健康問題に関連してきます。
Hepatology. 2013 Jun;57(6):2525-31. DOI: 10.1002/hep.26299. Epub 2013 May 1.
さらに、果糖ブドウ糖液糖や砂糖が簡単に手に入るようになったことで、体重増加の主な要因となる1日の平均カロリー摂取量も増えています。
研究によると、現在、平均して1日500カロリー以上を砂糖から摂取しており、これは50年前と比べて300%も増加している可能性があります。
Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2010 Sep 27; 365(1554): 2793–2807doi: 10.1098/rstb.2010.0149
Am J Clin Nutr. 2007 Oct;86(4):899-906. DOI: 10.1093/ajcn/86.4.899.
まとめ
果糖ブドウ糖液糖とフルクトースが肥満に関与していることは、研究により明らかにされ続けています。
また、内臓を取り囲む有害なタイプの脂肪である内臓脂肪を増やす可能性があります。
3. 過剰摂取は糖尿病につながる
フルクトースまた果糖ブドウ糖液糖の過剰摂取は、インスリン抵抗性にもつながる可能性があります。
J Clin Invest. 2009 May;119(5):1322-34. DOI: 10.1172/JCI37385. Epub 2009 Apr 20.
Nutr Metab (Lond). 2005 Feb 21;2(1):5. DOI: 10.1186/1743-7075-2-5.
インスリン抵抗性とは、インスリンの働きや分泌量が正常にも関わらず、インスリンが十分な効果を発揮していない状態のこと。インスリン感受性が低いともいえます。
インスリン感受性が低いことで起こる弊害として、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧があげられます。つまり、インスリン感受性が低れば糖尿病やメタボリックシンドロームの発症リスクを負うことになるのです。
健康な人の場合、炭水化物の摂取に反応してインスリンが増加し、炭水化物を血流から細胞内へと運びます。
しかし、定期的に過剰な果糖を消費することで、インスリンの効果に対して身体が抵抗性になる可能性があります。
これにより、血糖値を制御する体の能力が低下し、長期的に見るとインスリンと血糖値の両方が上昇してしまうのです。
Nutr Metab (Lond). 2005 Feb 21;2(1):5. doi: 10.1186/1743-7075-2-5.
さらには糖尿病に加えて、果糖ブドウ糖液糖は、心臓病や特定の癌を含む多くの病気にリンクされているメタボリック症候群に発展する可能性もあります。
Curr Hypertens Rep. 2010 Apr;12(2):105-12. doi: 10.1007/s11906-010-0097-3.
まとめ
果糖ブドウ糖液糖や砂糖の過剰摂取は、2型糖尿病やその他多くの深刻な疾患の主要な原因であるインスリン抵抗性とメタボリックシンドロームを引き起こす可能性があります。
4. 他の重篤な疾患のリスクを高める可能性がある
健康を害する複数の深刻な病気について、果糖の過剰摂取と関係があると言われています。
果糖ブドウ糖液糖と砂糖は、肥満・糖尿病・心臓病・がんのリスク上昇と関連する炎症を促進することが示されているのです。
炎症に加え、過剰な果糖は細胞を傷つける可能性のあるAGEs(advanced glycation end products)と呼ばれる有害物質を増やす可能性も示唆されています。
Nutr Rev. 2007 Jun;65(6 Pt 2):S13-23. doi: 10.1111/j.1753-4887.2007.tb00322.x.
Metabolism. 2008 Sep;57(9):1211-20. doi: 10.1016/j.metabol.2008.04.014.
J Hypertens. 2008 Apr;26(4):765-72. doi: 10.1097/HJH.0b013e3282f4a13c.
また、痛風などの炎症性疾患を悪化させる可能性があります。これは、炎症と尿酸の産生が増加するためです 。
Cleve Clin J Med. 2006 Dec;73(12):1059-64. doi: 10.3949/ccjm.73.12.1059.
BMJ. 2008 Feb 9;336(7639):309-12. doi: 10.1136/bmj.39449.819271.BE. Epub 2008 Jan 31.
果糖ブドウ糖液糖や砂糖の過剰摂取に関連する健康問題や病気のすべてを考慮すると、このように心臓病のリスク増加や寿命の短縮と関連付ける研究が始まっているのは、当然のことであるように思えます。
JAMA Intern Med.2014 Apr;174(4):516-24. DOI: 10.1001/jamainternmed.2013.13563.
まとめ
果糖ブドウ糖液糖の過剰摂取は、心臓病を含む多くの病気のリスク上昇と関連している。
5. 必須栄養素が含まれていない
果糖ブドウ糖液糖は「空」のカロリーです。
カロリーは高いのですが、必須栄養素は含まれていないのです。
これは、精製して作られた上砂糖やグラニュー糖・三温糖にも言えることです。
したがって、果糖ブドウ糖液糖や精製砂糖を食べれば食べるほど、栄養価の高い食品を食べる余裕がなくなるので、食事で摂取できる総栄養素量は減少してしまいます。
過食なのに栄養不足だなんて、皮肉な話です。
6.果糖ブドウ糖液糖は老化促進の原因となる
果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖は、ブドウ糖の10倍以上の糖化リスクがあります。
これは果糖はブドウ糖よりも「体の焦げ付き」を促進させるAGEs(エイジス・終末糖化産物)を多く発生させるためです。
AGEsによる老化は、肌のくすみや、ハリが失われたりシワが増えたりなど、見た目の老化だけに留まらず、内臓、血管、脳、骨、髪など全身にまでその影響を及ぼし、多くの疾患を引き起こす原因となり得ます。
見た目年齢も、体内年齢も、若々しくいたい方は、果糖ぶどう糖液糖などが添加されている清涼飲料水や調味料は避けるようにしましょう。
サニーヘルス株式会社
まとめ
果糖ブドウ糖液糖の過剰摂取が、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームなど、多くの深刻な健康問題の原因であると複数の研究・調査で判明されています。
果糖ブドウ糖液糖、また砂糖を避けることが、健康を改善し、病気のリスクを低減するための最も効果的な方法の一つである可能性があることを、知っておいてください。
今一度、購入しようとしている食品の添加物を確認し、自分自身や家族の健康を守るようにしましょう。
ワインの闇・おすすめ無添加ワインはこちらの記事ご参照ください。
おまけ・人工甘味料について
果糖ブドウ糖液糖の代わりに、カロリーゼロを売りにした人工甘味料の消費が増えているのですが、その人工甘味料も肥満の原因と考えられています。
これまた皮肉な話です。
大草原
人工甘味料については、また別記事でまとめます。
砂糖の代用品におすすめ、オリゴ糖についてはこちらご参照ください。