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冷水療法に意味はあるのか?研究論文をまとめてみた

冷水療法に意味はあるのか?研究論文をまとめてみた

健康関連のインフルエンサーやセレブリティ、アスリート、トレーナーたちがこぞって認めるように、冷たい水に身体を浸すことは健康にとって明確な効果があると言い、実行しています。

しかし、冷水療法の背後にある科学的根拠は何でしょうか?一体具体的にどのような効果があるのか?また、冷水に浸かるのに安全で最適な方法は何でしょう?

この記事では、これらの疑問にお答えし、冷水療法に関するこれまでの研究論文をご紹介します。

冷水療法とは具体的にどのようなもの?

冷水療法とは、15°C前後の水を用いて健康状態を治療したり、健康増進を図ったりする方法です。コールドハイドロセラピー(cold hydrotherapy)とも呼ばれます。

この方法は、数千年前から行われています。しかし、最近では、氷水浴、毎日のシャワー、屋外での水泳、冷水浸漬療法などが取り入れられています。

どのような効果があるのか?

冷水療法に意味はあるのか?研究論文をまとめてみた

冷水療法は、血行を良くし、睡眠を深くし、代謝が促進され、体内の炎症を抑えることができると考えられています。

このような効果を裏付ける逸話的な話はありますが、これらの主張を裏付ける研究はあまり行われていないのが現状です。

しかし、冷水療法には、科学的に証明された効果があります。どのような効果があるのか、詳しく見ていきましょう。

筋肉痛の軽減

運動後に短時間でも冷水に浸かったアスリートは、その後の筋肉痛が少ないことが研究で示されています。

2011年に行われた小規模な研究では、激しいトレーニングを終えたサイクリストが10分間冷水に浸かった後、筋肉痛が減少したことが示唆されました。

Eur J Appl Physiol. 2012 Mar;112(3):951-61.

20人の参加者を含む2016年の研究でも、同じことが示されました。冷たい水(12℃~15℃)のプールに浸かったアスリートは、運動後にコールドハイドロセラピーを行わなかったアスリートに比べて、筋肉痛が少なかったと報告されています。

Medicine (Baltimore). 2016 Jan; 95(1): e2455.

医学専門家によると、冷水が痛みに効く理由は、血管を収縮させるからだそうです。これにより、例えば氷を当てているケガの部分への血流が減少し、腫れや炎症を抑えることができるのです。

注意:筋肉の回復を助けるために冷水を使用する場合は、ストレッチやアクティブリカバリー(クールダウン)などの戦略と組み合わせるとよいでしょう。

筋肉トレーニング後のクールダウンが早い

冷水療法に意味はあるのか?研究論文をまとめてみた

冷水への浸漬は、涼しい環境で休息するよりもはるかに速く体温を下げるのに役立つということは、研究でも明らかです。

2015年に行われた19の研究のメタ分析では、冷水(約10℃)を当てることは、水治療なしの回復よりも2倍速く火照った身体を冷やすと結論付けました。

重要なのは、できるだけ広い範囲の皮膚を浸すことです。つまり、手や足を冷やすだけではなく、全身を冷水に浸すのです。

Med Sci Sports Exerc. 2015 Nov;47(11):2464-72.

うつ病の症状を緩和する可能性

冷水療法に意味はあるのか?研究論文をまとめてみた

冷水は精神的な健康状態を改善するものではありません。しかし、ある研究事例によると、冷たいオープンウォータースイミング(川、湖、海または水路など、自然の水域で行われる長距離の水泳競技のこと)がうつ病や不安の症状を和らげるのに役立ったという人がいます。

ケーススタディの1つとして、17歳から不安とうつ病を経験していた女性のケースがあります。24歳のとき、彼女は週1回のオープンウォータースイミングの試行プログラムを開始しました。

その結果、症状が大幅に改善され、薬物療法を中止することができました。1年後、彼女の医師は、定期的な水泳が彼女のうつ病の症状を抑えていることを発見しました。

Open water swimming as a treatment for major depressive disorder

別の研究では、研究者は、1日2回の短い冷水シャワーのプログラムが抑うつ症状を減少させることを発見しました。ただし、この研究については、うつ病と診断された参加者はいなかったことに留意することが重要です。

Med Hypotheses. 2008;70(5):995-1001. doi: 10.1016

免疫系を高める可能性

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冷水療法が体の免疫系を刺激する可能性があるという証拠がいくつかあります。これは、理論的には病気と闘う能力(免疫力)を向上させることに繋がります。

オランダのある研究では、研究者は、瞑想、深呼吸、冷水浸漬を実践することによって、人々が自発的に自分の免疫反応に影響を与えることができるかどうかをテストしました。結果は良好であったとのこと。

研究参加者が細菌感染にさらされたとき、これらのテクニックを使用したグループは症状が抑えられました。彼らの身体は、感染症に反応して、より多くの抗炎症性化学物質を生産し、炎症性サイトカインを減少させたのです。

この場合、研究者たちは、呼吸法の方が冷水への浸漬よりも影響が大きいと意見していることに留意することが重要である。しかし、研究者たちは、冷水が時間をかけてストレスに対する抵抗力のようなものを作り上げてくれると信じていようです。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 May 20; 111(20): 7379–7384.

他の研究によれば、毎日冷水を浴びれば、数週間から数ヶ月の間に、抗腫瘍免疫力が高まる可能性があるとのこと。

N Am J Med Sci. 2014 May; 6(5): 199–209.

冷水浸はダイエットに効果があるのか?

健康インフルエンサーによると、寒冷暴露の効果は、カロリー燃焼能力を高めることができるそうです。しかし、この主張には真実はあるのでしょうか?

冷水療法が減量に役立つかどうかを判断するには、さらに多くの研究が必要ですが、いくつかの研究では、冷水への浸漬が代謝率を速めることが示されています。代謝率とは、体内でエネルギーが消費され、カロリーが燃焼される割合のことです。

例えば、韓国の女性は何世代にもわたり、済州島沖の冷たい海に潜って魚介類を獲って生計を立ててきました。日本でいう尼さんです。近年ウェットスーツに移行するまで、彼女たちは薄い綿の水着だけを着て、10℃から25℃の海水に潜っていたのです。

研究者が彼女たちを調査したところ、基礎代謝量は夏の潜水時よりも冬の潜水時の方が有意に高いことがわかりました。

J Physiol Anthropol. 2017; 36: 33.Published online 2017 Aug 8. doi: 10.1186/s40101-017-0146-6

しかし、だからといって、冷たい風呂やシャワーを浴びれば、より体重が落ちるのでしょうか?科学的にはそこまでは言えません。

2009年の研究レビューでは、15℃以下の水に短時間(5分間)浸かると、代謝が上がるという結論が出されています。しかし、氷水に何度も浸かることで大幅な減量につながることを証明する大規模な研究はありません。

What is the biochemical and physiological rationale for using cold-water immersion in sports recovery? A systematic review

冷水療法の方法

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冷水療法の効果を自分で確かめたい場合は、以下のような方法で試すことができます。

  • 温水から冷水のシャワーを浴びる。最初はぬるま湯で、数分後に徐々に温度を下げます。
  • アイスバスに浸かる。10℃~15℃になるまで水に氷を加え、10~15分間だけ浸かっていましょう。
    しかし、2017年のとある小規模な研究では、氷風呂は専門家がこれまで信じていたほど有益ではない可能性が示唆されています。

冷水療法を実施する際には、必ずまず医師に相談してください。

冷水への浸漬は、血圧、心拍数、循環に影響を与えるため、深刻な心臓への負担を引き起こす可能性があります。

ウォータースイム中に、寒さにさらされたり、心臓発作を起こしたりして死亡した例が多数あります。医師とリスクについて話し合い、冷たい水に浸かっても安全であることを確認してから挑戦してください。

また、一人で行うのではなく、観察してくれるひとを付けてください。水温が危険なほど低いと、理性や感情が影響を受ける可能性があるため、特に自然環境で泳ぐときは、誰かがそばにいて状態を監視するようにしてください。

水から上がったら、必ず体を温めましょう。水から上がった後も体温が下がり続け、低体温症のリスクが高まる可能性があります。
しかしながら、いきなり熱いシャワーを浴びるのは避けましょう。血流の急激な変化により、気絶する恐れがあります。

アウトドアスイミング協会では、オープンウォータースイミングに挑戦する場合、安全かつ徐々に体を温めるために、水から上がったあとは以下のステップを踏むことを推奨しています。

  • 帽子と手袋を着用する。
  • 濡れた衣服を脱いで乾かす。
  • 上半身から暖かく乾いた衣服を重ね着する。
  • 暖かい飲み物を飲む。
  • 糖分は体温を上昇させるので、甘いものを食べると効果的です。
  • 暖かい場所で座るか、歩いて体温を上げる。

浸かる時間は短めで行おう

冷水療法の健康効果を得るには、数分で充分でしょう。徐々に耐冷性を高めることはできますが、数分以上冷水に浸かる治療上の理由はありません。

まとめ

冷水療法は、以下のような効果が期待できます。

  • 筋肉痛を軽減する
  • 汗をかいた後のクールダウン
  • 気分転換になる
  • 免疫力を高める
  • 代謝を促進する

また、炎症を抑えたり、睡眠を改善したり、精神的な集中力を高めたりする効果もあると言う人もいます。しかし、これらの効果が科学的に裏付けられているかどうかを判断するには、今後より多くの研究を行う必要があります。

冷水浸漬を試す場合は、まず医師に相談し、自分にとって安全であることを確認してください。

また、野外で泳ぐ場合は、必ず誰かが同伴してください。冷水は循環系に大きな影響を与えるので、短時間の浸水とその後の緩やかなウォームアップを計画する必要があります。

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