コラーゲンは体内に最も多く存在するタンパク質であり、ゼラチンはコラーゲンを調理したものです。
そのためコラーゲンとゼラチンは、共通している特徴や効能多々あります。
しかし、両者の用途や適用範囲は大きく異なるため、これらを互換的に使用することはできません。
この記事では、コラーゲンとゼラチンの主な違いと共通点を確認し、どのような用途でどちらを選ぶべきかを確認していきます。
コラーゲンとゼラチンの類似点
コラーゲンは、人の皮膚・血管・じん帯・腱・軟骨などの組織を構成する繊維状のたんぱく質です。
体内に存在するすべてのたんぱく質の約30%を占めており、そのうちの40%は皮膚に、20%は骨や軟骨に存在し、血管や内臓など全身の組織にも広く分布しています。体の構造、強度、安定性をもたらしています。
一方、ゼラチンは、動物の皮膚や骨を煮たり調理するなど、熱を加えてコラーゲンを部分的に分解することによって作られるタンパク質製品です。
以下の表は、乾燥コラーゲンとゼラチンの大さじ2杯(14グラム)の栄養素を比較したものです。
コラーゲン | ゼラチン | |
---|---|---|
カロリー | 50 | 47 |
タンパク質 | 12グラム | 12グラム |
炭水化物 | 0グラム | 0グラム |
脂質 | 0グラム | 0グラム |
このようにコラーゲンとゼラチンは、ほぼ100%タンパク質で構成されており、1食あたりのタンパク質摂取量もほぼ同じになります。
またコラーゲンとゼラチンは、タンパク質を構成する有機化合物であるアミノ酸の組成も似ており、グリシンを最も多く含まみます。
しかしながら、市販のゼラチン製品の中には、砂糖・着色料・香料が添加されているものがあり、その場合は両者の栄養特性に大きな影響を与える可能性があります。
これらのことから、「ゼラチンを摂る = コラーゲンを摂取すること」これが成立します。
まとめ
コラーゲンは体内で最も豊富なタンパク質ですが、ゼラチンはコラーゲンの劣化した形です。したがって、両者の栄養組成はほぼ同じである。
Cold Spring Harb Perspect Biol. 2011 Jan; 3(1): a004978.doi: 10.1101/cshperspect.a004978
Int J Mol Sci. 2018 Oct; 19(10): 3059.Published online 2018 Oct 7. doi: 10.3390/ijms19103059
J Cosmet Dermatol. 2018 Feb;17(1):20-26. doi: 10.1111/jocd.12450. Epub 2017 Nov 16.
J Food Sci Technol. 2017 May; 54(6): 1646–1654.Published online 2017 Mar 29. doi: 10.1007/s13197-017-2597-5
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE
コラーゲンとゼラチンの健康効果
コラーゲンとゼラチンは、化粧品業界や製薬業界で広く使用されており、その主な理由は、皮膚や関節の健康に対する有益な効果があるとされています。
Annu Rev Food Sci Technol. 2015;6:527-57. doi: 10.1146/annurev-food-031414-111800.
1.皮膚老化の低減の可能性
コラーゲンとゼラチンは、お肌のコラーゲン含有量が減少することが原因で起こる乾燥、弾力性の喪失など、お肌の老化の兆候を改善する可能性があります。
J Cell Mol Med. 2018 Jan; 22(1): 277–288.Published online 2017 Sep 18. doi: 10.1111/jcmm.13317
コラーゲンとコラーゲンペプチド(コラーゲンを酵素などで分解し、比較的低分子化したもの)の摂取が、肌のコラーゲン産生を高め、アンチエイジング効果をもたらす可能性があることを示す研究があります。
Int J Mol Sci. 2018 Oct; 19(10): 3059.Published online 2018 Oct 7. doi: 10.3390/ijms19103059
J Drugs Dermatol. 2019 Jan 1;18(1):9-16.
Nutrients. 2019 Oct; 11(10): 2494.Published online 2019 Oct 17. doi: 10.3390/nu11102494
例えば、被験者が毎日10グラムの経口コラーゲンサプリメントを摂取した2つのヒト試験では、8週間後と12週間後にそれぞれ、皮膚の水分が28%改善し、コラーゲンの質の低下の指標である「コラーゲン断片化」が31%減少することが分かりました。
J Cosmet Dermatol. 2015 Dec;14(4):291-301. doi: 10.1111/jocd.12174. Epub 2015 Sep 12.
これは動物実験ですが、12ヶ月間魚由来のゼラチンを摂取することで、皮膚の厚みが18%、コラーゲン密度が22%改善されました。
Food Funct. 2019 Jul 17;10(7):3890-3897. doi: 10.1039/c9fo00661c.
さらに、コラーゲンが皮膚構造のもう一つの重要な構成要素であるヒアルロン酸のレベルを増加させる可能性を示す研究にて、コラーゲン摂取は紫外線Bによる皮膚損傷を回避する可能性を示唆しています。
Int J Mol Sci. 2018 Nov 11;19(11):3551. doi: 10.3390/ijms19113551.
Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2013 Aug;29(4):204-11. doi: 10.1111/phpp.12051.
最後に、105人の女性を対象とした6ヶ月間の研究では、1日2.5グラムのコラーゲンペプチドを摂取すると、セルライトが減少し、肌の外観が著しく改善することが判明しました。
J Med Food. 2015 Dec 1; 18(12): 1340–1348.doi: 10.1089/jmf.2015.0022
2.関節の健康を改善する可能性
コラーゲンとゼラチンのサプリメントは、運動によって引き起こされる関節の摩耗や、痛みや障害を引き起こす可能性がある変性関節疾患の治療に役立つ可能性があります。
コラーゲンとゼラチンのタンパク質が摂取後に軟骨に蓄積されることで、痛みやこわばりを軽減し、関節の健康を改善する可能性があることが研究で示されています。
Int Orthop. 2019 Mar;43(3):531-538. doi: 10.1007/s00264-018-4211-5. Epub 2018 Oct 27.
Curr Med Res Opin. 2006 Nov;22(11):2221-32. doi: 10.1185/030079906X148373.
変形性関節症の80人を対象とした70日間の研究では、1日2グラムのゼラチンサプリメントを摂取した人は、対照群と比較して、痛みと身体活動が有意に改善されました。
J Agric Food Chem. 2012 Apr 25;60(16):4096-101. doi: 10.1021/jf205295u. Epub 2012 Apr 16.
同様に、94人のアスリートを対象とした24週間の研究では、毎日10グラムのコラーゲンサプリメントを摂取した人は、対照群の人と比較して、関節痛、運動能力、および炎症に有意な改善を示しました。
Curr Med Res Opin. 2008 May;24(5):1485-96. doi: 10.1185/030079908x291967. Epub 2008 Apr 15.
その他の効果
コラーゲンとゼラチンには、さらに以下のような共通した健康効果があります。
抗酸化作用
コラーゲンとゼラチンの両方が抗酸化能力を持ち、酸化による身体への攻撃を回避してくれます。
Annu Rev Food Sci Technol. 2015;6:527-57. doi: 10.1146/annurev-food-031414-111800. Epub 2015 Mar 23.
腸の健康状態を改善
コラーゲンとゼラチンは、腸の内壁を改善する可能性があります。腸の内壁の損傷は、リーキーガット症候群や他の自己免疫疾患につながる可能性がありますので、コラーゲンとゼラチンの摂取により、これらを回避できる可能性があるのです。(22Trusted Source、23Trusted Source)。
Food Funct. 2017 Mar 22;8(3):1144-1151. doi: 10.1039/c6fo01347c.
Gut. 2019 Aug;68(8):1516-1526. doi: 10.1136/gutjnl-2019-318427. Epub 2019 May 10.
骨の健康を改善する
ゼラチンなどの分解コラーゲンを補うことで、骨の分解を減らしながら、骨密度と骨形成を増加させる可能性があります。
Journal List Nutrients v.10(1); 2018 Jan PMC5793325
まとめ
コラーゲンとゼラチンは、皮膚、関節、腸、骨の健康を改善する可能性があるため、化粧品業界や製薬業界で広く使用されています。
コラーゲンとゼラチンの違い
コラーゲンとゼラチンの違いは、化学構造です。
天然のコラーゲンは、1,000個以上のアミノ酸からなる3本の鎖で構成される三重らせんを形成しています。
一方、コラーゲンの劣化型であるゼラチンは、部分的な加水分解や破壊を受け、より短いアミノ酸鎖で構成されているのです。
このため、ゼラチンは純粋なコラーゲンよりも消化しやすくなっています。
しかし、市販されているコラーゲンサプリメントは、コラーゲンペプチドと呼ばれる完全に加水分解されたコラーゲンでできており、これはゼラチンよりも消化しやすいものです。
両者の性質の違いとして、コラーゲンペプチドはお湯でも水でも溶け、一方ゼラチンはお湯にしか溶けません。
また、ゼラチンはそのゲル化作用により、冷やすととろりとしたゲルになることがありますが、コラーゲンペプチドはそのような性質がありません。
このような性質の違いがあるために、コラーゲンとゼラチンを同じ用途で使用することはできません。
まとめ
コラーゲンとゼラチンの主な違いは、主に化学構造であり、コラーゲンはお湯や水に完全に溶け、ゼラチンは冷やすととろみのあるゲルを形成します。
コラーゲンとゼラチン、どちらを選ぶべき?
経口摂取されたコラーゲンとゼラチンは、どちらもバイオアベイラビリティが高く、消化器官で効率的に吸収されます。
バイオアベイラビリティ…人体に投与された薬物のうち、どれだけの量が全身に循環するのかを示す指標。
Annu Rev Food Sci Technol. 2015;6:527-57. doi: 10.1146/annurev-food-031414-111800. Epub 2015 Mar 23.
したがって、コラーゲンとゼラチンのどちらを選ぶかは、その目的によって決まります。
コラーゲンは主に、消化しやすい栄養補助食品として使用されます。
コーヒーや紅茶に入れたり、スムージーに混ぜたり、スープに混ぜたりしても、その粘性に変化はないので、食べ物の食感を変えることなく摂取することができます。
一方、ゼラチンはゲル化作用があるため、料理応用に幅広く利用されています。
自家製ゼリーやグミを作ったり、ソースやドレッシングにとろみをつけたりするのに使うことが多いです。
健康を意識した摂取の場合は、コラーゲンサプリメントの利用が適切であるといえます。
コラーゲンサプリメントはラベルに一回当たりの摂取量が表示されているので、摂取量調整をしやすく、また効率よく摂取することができます。
しかしながら、調理に使用するゼラチンの摂取量は、他材料と混ぜて小分けすることもありますので、一回の摂取が少なくなりがち。
ゼラチンを食べることでコラーゲンを摂取したことになりますが、充分な量を摂取したい、また吸収効率の良さも意識する場合は専用サプリメントをご検討ください。
まとめ
コラーゲンは栄養補助食品として使われることが多く、ゼラチンは料理に使用するのが好ましいです。
おすすめコラーゲンサプリメントは、こちらの記事ご参照ください。
コラーゲンとゼラチンのまとめ
コラーゲンは体内で最も豊富なタンパク質であり、ゼラチンはコラーゲンの劣化した形です。
よって、両者はほとんど同じ栄養プロファイルを持ち、どちらも関節、皮膚、腸、髪、骨の健康を改善する可能性があります。
しかし、化学構造の違いにより性質がことなり、それぞれ異なる目的で使用されいます。
栄養補助食品としてでしたら、コラーゲンの方が適しています。
ゼラチンは、デザートやゼラチン状のとろりとした食感を必要とする料理の調理に適しています。
コラーゲン | ゼラチン | |
化学構造 | 約10万本のアミノ酸からなる三重らせん構造 | 短鎖アミノ酸を含む分解された形状 |
消化率 | コラーゲンペプチドとして摂取すると非常に消化されやすい | 消化されやすい |
溶解度 | 高温でも低温でも溶解する | 高温にのみ溶解 |
ゲル化特性 | 無 | 有 |
用途 | 主に栄養補助食品として | 主に調理用として |
メリット | 皮膚・関節・骨・腸の健康維持・改善の可能性がある | 皮膚・関節・骨・腸の健康維持・改善の可能性がある |
おまけ ゼラチンの形状と使い方について
ゼラチンは粉末タイプの「粉ゼラチン」、とシートタイプの「板ゼラチン」が販売されています。
板ゼラチンは、氷水に1~2分ほど浸けてふやかし、よく絞ってから60℃に温めた液体に入れて溶かします。
粉ゼラチンは、温めた液体に直接入れて溶かすことが可能です。
しかし、粉ゼラチンの場合でもダマにならないように一旦「お湯に振り分けて戻す」作業を行い、材料に加えることが多いです。
一気に入れてしまうとダマになりやすく、ゆっくり過ぎても最後のほうに入れたゼラチンに水分が行き渡りません。
全体をふやかせるように、調整しながら入れましょう。
粉ゼラチン・板ゼラチンを溶かすときのポイントは、50~60℃程度で溶かすこと。
それよりも高温になると固まりにくくなるため、温度には注意しましょう。
板ゼラチンの固める力は粉ゼラチンより弱いので、柔らかい食感のゼリーやムースなどを作りたいときには板ゼラチンのほうが合っています。
ゼラチンにはグレードがあり、良いグレードのものほど透明度が高く、仕上がりに違いが出るので、プロは高いグレードを求めて高品質なゼラチンを使います。
ゼラチンと野菜ジュースを使った、オーガニック無添加ゼリーの作り方はこちらの記事をご参照ください。
おすすめ板ゼラチン
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